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Perfume to 私 と BABYMETAL

PerfumeとBABYMETALのレフトなファンの戯言

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もしも高校バスケットボール部マネージャーがPerfumeのライブを観たら その4 

「問題は、経験不足だ。」

「江部薬子工業との試合は、監督の吉岡が後輩だったから実現したが、おまえたちの戦績だと練習試合を組むのも難しい。」

田中監督は選手にそう告げた。 根岸も床に座り、鉄アレイで腕を鍛えながらその話を聴いていた

「もう、頼み込んで練習試合を組むのはいやだ。俺はやらない。」

「これからはお前たちの実力で、練習試合を申し込まれるくらいになれ!」

「はい!」キャプテン辻は大きな声で返事をした。

「そこでだ、はなちゃん! 君はこいつらに徹底的にドリブルを教えてくれ。」

「え?私がですか?」

「そう、お前たち、はなちゃんの言うことは俺の言うことだ。逆らうなよ!。」

「はい!」全員が直立不動でその命令を快く受け入れた。

はなはとても嬉しかった。だって、身長というハンディだけで諦めていたバスケが出来るのだ。

でも… あの嫌な気持ちがぶり返すかもしれない

 そう思っていたはなに監督はカラーボールを手渡した。

6号球。中学女子が使うボールの大きさだ。

懐かしい感触。中学三年生の引退試合に出られなかった悔しさよりも、皮の心地よい感触のほうが優っていた。

バスケットボールができるの?していいの?…顔を上げて監督を見た。

監督は不器用なウインクをして笑顔だか、ひきつけだかわからない表情をつくっていた。

「あの ありがとうございます…でも…」

「なに?男子と同じボールがいいか?」

「いえ 違うんです 私を はなちゃんって呼ぶのは…」

照れ隠しに、気になっていたことが言葉になった。

「だめ はなちゃんは はなちゃんだ。」

そういって監督は背を向けて選手に号令をかけた


実は はなは 自分の名前が大嫌いだった。

お母さんもお父さんも大好きだがこの名前だけは気に入らなかった。

いえ うそ 本当は大好きな名前だった。

でも、中学入学時にさんざん馬鹿にされた。

それから自分の名前を恨んだ。

せめて、漢字だったら良かったのに…



「よし、一日の仕上げだ。まずは、全員、はなちゃんとマンツーマンだ。 はなちゃんからボールを奪えたら合格だ」

「本気を出せよ! はなちゃんを甘くみたら許さんぞ!」

監督はそういった。

「うぉーー! 」と選手が奇声を上げた。

ちょっとだけ怖かったが、その気持がはなを本気にさせた。





「はなちゃん どうしたの?こんな遅くまで…」

「お母さん、ごめんなさい。携帯電話の電池が切れちゃって連絡できなかったの」

「大丈夫?ずいぶん疲れた顔しているけど…」

「ありがとう。大丈夫 疲れたのは疲れたけど… はぁー疲れた!」

「今日はカレーでよかった?。食べるでしょ?」

「うん でも、まずシャワーを浴びたい。」

「いいわよ。果物も切っておくわ。」

はなは汗で汚れた体操着を洗濯籠に入れて、それから浴室に入った。

はなの家はそれほど裕福でもないが貧しくもない。

両親とも仕事を持っており、欲しい物を言えばなんでも買ってくれる。

でも、はなは贅沢を言わない子だった。

中学で、部活のみんなが有名メーカーのニューモデルで高価なバスケットシューズをお揃いで買うというときも、もったいないからという理由で、旧モデルの廉価なバスケットシューズを購入した。

そういう性格が、仲間はずれの原因だったかもしれない。

だけど、はなは両親が懸命に働いていることを知っていた。

だから、無駄遣いや贅沢を言わなかった。高校での新しい体育用シューズの購入をせずに、中学の頃、おばあちゃんに買ってもらったバスケットシューズを使うことにしてたのもそういう理由だ。

シャワーを浴びながら、今日、バスケットシューズを持って行ったのも何か運命かも?と思いながら

はなは、愛子に聞かせてもらった曲のメロディーを歌いながらシャワーを浴びた。



はなの低く速いドリブルチェンジからボールをカットするのは難しかった。

選手たちは自然と腰を下ろしたディフェンスになり、相手が女の子だから身体接触をしないように細心の注意を払いながらスティールを試みた。

結果、アニメガネ7番の立岡だけが、制限時間内に、はなからボールを奪えた。

ただし、全員相手にしたはなが疲れて足がもつれたからだ。

監督は腕組をしながら満足そうにその風景をみていた。

根岸は、愛子と特別メニューをしながら、コートのはなが気になってしかたがなかった。



「おかあさん!いまあがるよ!」

母親は、洗濯籠からはなの体操着を取り出しながら、久しぶりに聴くはなの鼻歌を聴いて微笑んだ。

あの子は入学以来、どんどんどんどん暗い表情になっていった。

でも、今日は疲れたと言いながらも明るい表情で帰ってきた。

そう、小学生の頃にミニバスをしていた頃の表情で…。

はなの母親は必要以上に大きな声で浴室に向かって叫んだ

「はなちゃん!よかった!。ちょうどお父さんも帰ってきたよ!」


食卓に戻ると、父親がニコニコして座っていた。

「一緒にごはんを食べるのは久しぶりだな。」

「そうだね。久しぶり。」

「なによりも、はなのそんな表情は久しぶりだよ。」

「え?」

「そうよ。おかあさん、ずーっと反省していたの。」

「なにを?」

「はなを無理やり網津高校に入学させちゃって…」

「そんな…」

「お母さんもお父さんも、はなの暗い表情に胸を痛めていたんだよ。」

涙がこぼれた。

そんな顔していたんだ。そして、それについて何も言わず、自分たちが反省していただなんて…。

はなは頭を机にゴツンとぶつけてそのままの姿勢でいった。

「お父さん、お母さんごめんなさい。もう大丈夫です。いえ、はなを網津高校に進めてくれてありがとうございます。」

その日のカレーの味を一生忘れないと思った。



翌日、遅刻しそうになって全力で駅まで走った。

太ももが痛かった。筋肉痛だ。身体が鈍っていたとはなは思った。

合気道で使う筋肉とバスケットのそれとはぜんぜん違うのだ。

それでも、男の子みたいに全力で走った。

筋肉の痛さと風の心地良さが不思議な感覚を与えてくれた。

電車で座れたらいいけど…無理だしなぁ

そう思いながら改札を抜けてホームに出ると5番の市谷先輩が立っていた。

「おはよう!」

「あ おはようございます!」

「電車、間に合ってよかったよね。ちょと焦っちゃった。はなちゃん休むかと思って…」

はなが返事をしようとしたところに電車が轟音を立てて入ってきた

乗り込むといつもより満員だった。

市谷先輩はドアに両手をついて、はなを守る姿勢になった。

おかげで、学校までとても楽な姿勢でいることができた。

でも、市谷先輩はものすごく辛かったと思う。

降り際に市谷は呟いた。

「こりゃ、きついペナルティだな~」

「え?」


そう。はなからボールを奪えなかった者は、通学時にはなと愛子を満員電車の中で守るというペナルティが課されていたのだ。

「ペナルティっていうより、これは特訓になるな…」

市谷のちいさなつぶやきを、はなは聞き逃さなかった。


網津男子バスケットボール部の朝は早い。

市谷は毎朝のように、自宅からはなが乗車する駅まで2kmの距離をランニングしていた。

他のメンバーも、一番遠い9番吉川が7kmで、一番近い立岡でも4kmをランニングで通学していた。 7時には学校に集合して8時15分まで体育館でひたすらシュートを打っていた。

朝食をしっかり食べないと許さないという監督命令があったから朝5時には起床しているはずだ。

昼休み体育館は全校生徒が利用するので、生徒玄関のすぐ外でパス練習をしていた。
雨の日には、なんと廊下で腕立て伏せと腹筋、背筋を鍛えていた。

昼ごはんはいつ食べるかというと、3時間目と4時間目の休憩時間にとっていた。

授業時間中に集中して勉強をしろ!というこれまた監督命令で、居眠りすることなんてもってのほか。授業時間に集中できないような奴は、過酷な試合中の集中なんて絶対にできない!というのだ。

3時半に6時間目が終わり、清掃や講習などに参加して5時に体育館集合。
週に3回しか男子バスケットボール部に割り当てされていない。そこで体育館が使えない日は、ひたすら筋力トレーニングとアジリティという瞬発力の練習を繰り返していた。

体育館で練習が出来る日も5時半から7時半までの2時間である。急いで片付けて8時には学校を出ないといけない。はなと愛子は住んでいる方向が違うので学校で分かれる。

はなも愛子も家に辿りつくのは10時ころになってしまう。だが、選手たちは学校から走って帰っていたのだ。 だから、やっぱり授業中に勉強をしっかりとやらないと、試験で点数が取れない。

田中監督は、ひとりでも試験の成績が悪ければ、公式戦には申し込まないという掟を作っていた。

過酷な毎日だった。愛子はその生活になれるまで大変だった。

でも、はなにとっては充実感がある毎日が楽しかった。中学校の時の練習に比べたら耐えられないことはない。

 はなのボールをカットできなかった部員も、市谷と藤子をのぞいてほぼ全員がマンツーマンではなと良い勝負ができるようになってきた。もともと、進学校で頭の良い生徒なのだ。集中して技術をみにつけ、論理的に正しく身体を動かせるようになるための鍛錬を嫌っていなかった。

 奈央と佳子は、うらやましそうに時々練習を覗きに来ていた。根岸と愛子は特別メニュー。

はなちゃんは男子生徒を相手にバスケットを楽しんでいる。

 奈央と佳子は置いて行かれたようで、少しさみしさを感じていた。自分たちもなにか打ち込めるものが欲しいと思った。





大堀中学校の門の前で並んだ6人の表情は真剣そのものだった。

はなは愛子の後ろに隠れるようにしていた。根岸は少し遅れて父親の車で送ってもらってきた。

自分の母校の校門が懐かしかった。ほんの3ヶ月ほど前のことなのに。

網津高校男子バスケットボール部の練習試合相手は、はなが入部していた大堀中学校女子バスケットボール部

そう、中学生女子を相手に練習試合することになったのだ。

いくらなんでも無茶すぎる

高校男子と女子中学生の試合だなんて…

絶対に大堀中学女子が勝つに決まっている と思っているのは、はなだけだった。

他のみんなは、相手が女子で女子中学生なんだから絶対に勝てるといっていた。

手加減するようなプレイは田中監督は許してくれないと…

だれも知らないんだ。大堀中学女バス部は、今年の県大会で3位の実力がある強豪校であり、現在のチーム平均身長は176cmなのだ。

網津高校の平均よりも遥かに高いのだ。

校門に見覚えのある顔の河合先生がやってきた。

そう、三年間、はなをベンチ入りさせてくれなかった先生だった。

「田中先生 お久しぶりです。」

「申し訳ない 怪我させないように十分注意してあるから お願いするよ。」

「いえいえ、とんでもない。付近の男子チーム相手で慣れていますから。」

「そういってくれると嬉しいよ。頼みますよ」

田中先生は、河合先生に頭を下げた。

河合先生はおろおろしながらいった

「やめてください 頭を上げてください」

田中先生のお辞儀は深くて長かった

なぜか愛子も一緒に頭を下げていたので、はなも頭を下げていた。

河合先生が自分に気づいていないのか、気づかないふりをしているのかは、はなにはわからなかった。


懐かしい体育館だったが、なぜか冷たい感じがした。

もう初夏で気温は高いのに、寒く感じた。

後輩たちは、はなに気がついていたが誰も挨拶をしなかった。

胸がぎゅっと掴まれた感じで気持ちが悪くなった。

「どうしたの?はな?気分でも悪いの?」

「ううん なんでもない…」


試合開始 傍から見れば、女子高の強豪校と弱小中学男子チームとの試合が始まるように見える。

だが、なぜか網津高校の選手の顔は自信に満ちていた。

前々日から6号球で練習をしていたので、ハンドリングには違和感がなかったようだ。

しかし、根岸を欠いてこのメンバーで大堀中学と良い試合ができるだろうか。

そりゃ、田中監督の練習は厳しかった。でも江部薬子工業との試合後は、練習メニューはドリブルの基礎とスリーメンの練習。それに、はなとの1対1しかやっていなかったのだ。

勝てるわけがない。身長差10cmというのは大きい。

バスケットは高さがモノをいうスポーツなのだ。はなはそう思っていた。



試合開始直後、大堀女子バスケ部の河合監督の表情が変わった。

網津高校はスピードだけで勝負した。早いパスワーク。

ドリブルで一気に背の高い選手を抜きレイアップに持っていく。

プッシングを期待したディフェンスに対しても、見事なドリブルチェンジで対応した。

巧くファールを誘い、素早い連携は相手のディファンスを悩ませた。

それだけではなく、ドリブルカットが多かった。

はなを相手にしたドリブルカット練習を積んだ彼らにとっては、まるで中学生の女子を相手にしているようだった。

身体接触なしで軽々とカットしていくのは見ていて痛快だった。

またキャプテンの力士…ではなく辻がすごかった。

ハーフラインを少しこえたポジションから3ポイントシュートを打つのだ。

5本に1本くらいしか決まらないのだが、ものすごく高い軌跡を描くボールはディフェンスの意表をつくのに十分だった。

ただひとり女子の身長に辛うじて対抗出来る170cmのメガネなし帰宅部はなの用心棒5番市谷が絶妙なタイミングで相手リバウンダーの内側に入り込む。

ボックスといって相手を抑えつけた状態で、目の前にボールが落ちるまでジャンプしない。

不用意に相手がジャンプして上空でボールを奪おうとすると、タイミングをずらして少しジャンプをしてファールをもらう。 

市谷はボールを確保すると、タイミングをずらしてシュートする。背後からも前からも不用意に手を出すと、巧くシュートファールをもらえた。

市谷は辻と二人で組んで練習後や休みの日には、その練習ばかりしていた。そして、なにより満員電車での、激しい押し寄せに対して、どのスタンスが自分の姿勢を崩さず対応できるかということを練習をしていたのだった。

中学校女子県大会3位の実力の壁は厚かったが、なによりも網津高校のディファンスが良かった。

べつに難しいことをしているのではない。いや、体力のない選手にとっては難しいことかもしれない。

ハンズアップをしっかりとする。ただそれだけのことなのだが、網津高校はしっかりと両手を上げ続けていたのだ。

ドライブしてくる相手にも手をあげながらのスライドストップ。

小柄だがしっかりと筋肉のついている男子生徒を抜くことは難しい。

第2ピリオドに入るとセンターライン付近からの、辻のスリーポイントシュート成功率は50%を超えはじめた。

もし、誰かが辻にプレッシャーをかけようと飛び出たら、そのディフェンスをかわしてワンドリブルでフォワードにパスを出す。
辻はパスアンドランでディフェンスを置き去りにする。後は4対5の状況を作り出し速攻を決めてしまう。

このような戦い方をする相手に慣れていなかった河合監督の指示は後手後手になった。

アニメガネ7番の立岡が運んできたボールを辻にパスすれば、かなり離れた場所からスリーポイントシュート。辻にマークがピッタリとつくと、ハイポと呼ばれるフリースローラインに付近飛び出たメガネ帰宅部8番水野に向かってかなり高い位置のパスが送られる。
水野はそのボールをジャンプして掴むのではなくタップで左の立岡か右の吉川にパスする。
パスをしたあと、水野がすぐに切れこんでリターンパスをもらってレイアップする。もしくは吉岡、立岡がワンフェイクを入れてジャンプシュートする。そのパターンの連続だった。

早い展開で第2ピリオドが終わったときには67対57とハイスコアのゲーム展開で優勢だった。



「おい市谷、お前、よくあれだけ発達した女体と接触して平気でいられるな…」

ハーフタイムで、吉川がいった。

「なにが?」

「だってよ、お前、中学生とはいえ…なぁ?」

吉川は辻キャプテンに同意を求めた。

キャプテン辻には、吉川の声は全く聞こえなかった。
力士のような体格ながらも非常に柔らかいシュートフォーム。
辻は目をつぶり無心に繰り返しシュートフォームの修正をしていたのだ。

吉川は反対の席にすわっている1年生の、水野に顔を向けた。

水野はメガネを拭きながら、横目で一瞥して

「吉川先輩 不純です 今試合中です 男も女も関係ありません。」

そういってベンチにいる藤子にディフェンスのアドバイスを求めた

その様子を見ていた副キャプテンの立岡が、スコアの確認を終えたはなと愛子に聞こえるように言った。

「まぁ、エロDVDを数十枚隠し持っている吉川だけだよ。そんなふうに思うのは…試合に差し障りがあるから、次のピリオドから藤子と交代だな。」

「ちょっと待ってよ、俺は純粋な質問をしただけで…ねぇ ねぇ 誤解しないで…愛子ちゃん はなちゃん!」

弁解しようとした吉川を愛子は睨みつけ、はなは吉川を完全に無視した。

一番ドリブルが下手でパスカットも出来ない市谷。彼は毎日のように満員電車内ではなを守っていた。もちろん通勤電車だから大人の女性もたくさんいる。

市谷も最初の頃は大人の女性との接触が気になっていた。だが、はなを守るという使命感のほうが強くなり、今では全く気にならなくなっていた。というのも、毎日一緒に通学しているうちに、市谷は、はなに好意を寄せるようになっていたからだ。

第3ピリオド3分前になった。
田中監督は「藤子、吉川と交代。吉川、はなと一緒に廊下でシャトルラン10本走ってこい!」と告げた。

「え? 監督? スコアは? 私がいないと愛子はスコア書けないので…」はなは口答えした。

「根岸が暇そうだから、根岸にやらせる! はなちゃん 監督の命令に口答えしたから… はなちゃんもシャトルランをしてきなさい。」

「えええ!」

あまりにもの展開に、吉川は弁明できるチャンスを失ってしまった。

二人が体育館を後にした瞬間に、試合開始のホイッスルが鳴った。

吉川は、突然走ると危ないからストレッチをしろとはなに命じた。

ふてくされて出場することを諦めたのか、一緒になって吉川もストレッチに付き合った。

「あ~あ 初勝利の試合でコートにいれないなんて…俺はなんて不幸なんだ。」

吉川は文句ばかり言っていた。

だって、中学生って言ったって…あんな… おっとはなちゃんごめんごめん…

本当に吉川はスケベそうだった。絶対にロリコンアニメのファンだと、はなは決めつけてしまった。

それでも少し助かった気がしていた。

ストレッチが終わり、長い廊下でシャトルランを始めた。

体育館でのあの重苦しい思い出が、網津高校の選手がシュートを決める音を聞くたびに、すこしずつ消えてゆくような気がしていた。

しかし、ハーフタイムに入ってオフィシャルテーブルにスコアの確認に行ったときに、大堀中学の現キャプテンが、はなにむけてこう言ったのだ。

「あれ~ぇ はな先輩じゃないですか。あんまり小さかったからわからなかった~ぁ。」

後輩たちが一緒に笑い声を立てた。

はなの心臓がドキドキと大きな音を立てた。

やっぱり来るんじゃなかった。

帰りたい。そう思った。

あれ…もしかするとあんなに離れて選手に指示を与えていたのに、田中先生はそのことに気づいて…

まさか… まさかね…

はなは、考えることをやめて走ることに熱中することにした。



大堀中学は、170cmのガード8番の選手をのぞいて残り四名を180cm以上の選手に換えた。

網津高校の速い動きにつられることなく、ゆっくりと時間を使って、身長差を使ったオフェンスにかえたのだ。 ディフェンスも8番のガードが7番立岡にプレッシャーを掛けて時間を稼ぎ、ゾーンディフェンスを形成した。

辻の他にスリーポイントシュートを打つ選手がいない網津高校は苦戦した。

また、吉川に変わった藤子はスピードこそあるが正確なプレイが出来なかった。

ボールを保持しすぎて、全体の攻撃スピードが崩れだした。

ハンズアップをちゃんとするようになった大堀女子は、身長差と手足の長さで上空を制した。

点数差が縮まり、やがて逆転された。77対81 

第3ピリオドで大堀中学女子バスケットボール部は完全に調子を取り戻した。

はなと吉川がベンチに戻ってきた

「根岸先輩ありがとうございました。私、代わります。」

「いや、俺がスコアを書く。ほら、監督が呼んでるぞ。」

監督を見ると、ニコニコしながらおいでおいでと手招きしていた。

吉川と一緒に監督の近くに行くと、監督はこういった。

「そろそろ交代だ。準備しておけ。あ 吉川じゃないよ。 はなちゃんだ。」

「え?」

「はいユニフォーム。」そういって愛子が手渡してくれた番号は根岸の番号である6番だった。

「ええ?」

「大丈夫、これは一昨年までのユニフォームでとても小柄な先輩が使っていたやつなの。」

それはうそだとすぐに気がついた。はなの手にしたユニフォームは新品で女子Sサイズだった。

「文句も意見も聞かないぞ。第4ピリオドからフルで出るぞ。急いですぐに着替えてこい。」

監督がそう言い終わったときに第3ピリオド終了のホイッスルが鳴った。

はなが女子トイレで急いで着替えた。トイレの外には吉川がはなのバスケットシューズを持って立っていた。

「はな、おもいっきりバスケットを楽しんでこい。俺の分まで…」

完璧な計算だったのだ。

吉川の発言 それに対するベンチの反応 根岸がなぜスコアシートを書く机に座っていたのか…

愛子がなぜ前日の練習の後、はなちゃんと同じバスケットシューズが欲しいから貸してと、無理やりシューズを持っていったのか…。

大堀中学校と練習試合をすると知らされたのは今日の朝だった。

今までの重い空気が消えた。

全部、全部、私のため

「はなちゃん 勝とうぜ!」

吉川は、泣きそうになっているはなの背中を思い切り叩いた。



「河合監督 お世話になりました 憶えておられないでしょうが、今年卒業しました、はなです。」

「あ…うん 覚えているよ。」

「今日はすぐに挨拶しなければいけなかったのですが、挨拶遅れて申し訳ありませんでした。」

はなは大きな声でそういって背を向けて、仲間の元に戻った。

連敗記録は更新された。86対88 

最後の2分でオールコートマンツーマンプレスを仕掛けられて、8番1年生の水野が慌ててしまったのだ。

バスケット初心者だから仕方がない。時間ギリギリで彼は相手にパスをしてしまい、負けたのだ。

水野はわんわん泣いていた。悔しい悔しいと大きな声で叫んでいた。

はなは思う存分コートの中で暴れた。背の高い後輩を低く早いドリブルで抜いて、低い位置のパスをビシバシ決めた。

4番キャプテン辻がスリーポイントを決めたのも、はなのスクリーンプレイや的確で素早いリードパスのおかげだった。

スクリーンのため、ボールマンのマークの選手から少し離れて背後に立っているはな。それが見えないプレイヤーはボールマンのドリブルに気を取られてはなにぶつかる。はなは両足を動かさないで倒れた。それだけでチームファウルを5つも稼いだ。
大堀中学は、はなのドリブルをカットしようとしてプレッシャーをかけてくるのだが、はなは見事に交わしてしまう。いらついたディフェンスは身体をぶつけてしまい、華奢なはなは豪快にはじけ飛んだ。それでファールを4つ稼いだし、相手ガードは5ファールで退場になってしまった。

試合には負けて水野は号泣だったが、残りの全員は、はなの笑顔に大満足だった。

あ然としていた河合監督に田中監督は言った。

「私が監督なら、あんな天才的なガードを無駄にしなかったな。彼女を中心にチームを作っていたら県大会1位も夢じゃなかっただろうね。高さだけで勝負できるほど、バスケットボールは浅くないよ。河合くん。じゃぁ今日はありがとうね。」

監督 はな 愛子 そして、7人の選手はとても長く深いお辞儀をした。


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カテゴリ: もしも高校バスケットボール部マネージャーがPerfumeのライブを観たら

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Posted on 2010/11/15 Mon. 20:51    TB: 0    CM: 0

この方の記事を読んで欲しい 

モノ書きヴォーンズさんの記事です

まずは 「才」の話 ★パフュームin東京ドームについて★

「評」の話NO.0 ★パフュームin東京ドームについて★


「評」の話NO.1 ★パフュームin東京ドームについて★


「評」の話NO.1から読み始めるのも良いかも… この後、2 3 と続いております


以前の記事で 東京ドームで他のアーティストのライブを見た方のご意見をお待ちしておりましたが…
私のブログ 訪問者数が絶対的に少ないのでご意見がいただけませんでした

しかし、この方のブログ記事を読んで… ん 間違いなかったかもしれない! と思ったのでありました

にしても 面白い文体で 論理の展開がいちいち正しいと思うのでした(上から目線ですみません)

カテゴリ: perfume

[edit]

Posted on 2010/11/15 Mon. 04:16    TB: 0    CM: 2

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