Perfume to 私 と BABYMETAL

PerfumeとBABYMETALのレフトなファンの戯言

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僕のエマノン 最終話 

monkageさん 
P120548さん 
massasueさん 
ぶなしめじさん 
ひでちんさん 
チョービギナーさん 
eelfishさん
ヤジオショーさん
PPPHIVEさん

みなさん、ありがとうございます。

なんとか、ここまでやってきました

「需要表明って…めんどくせーなぁこの野郎!」と思われたでしょう

ですが、◇ボッチさんが書き始めたので、この後は一気に書き上げます

長いです… 銃撃戦や大どんでん返しなどはありません

【 それでもいいよって方は、どうぞ… 】



だけど、翌日のその約束は果たせなかった

猛吹雪になったことや、病気で倒れたヘルパーがいて猛烈に忙しくなってしまった

非番を返上しなければならなくなかった

「ごめんね。軽く約束してもうて…」

「うん、ありがとう。うれしかった。」

「私、帰ることにした」

「北湯沢に…だよね…」

「ううん…東京に…」

話したいことがいっぱいあった

でも、彼女は笑顔で手を振って、あっけなく出ていった。

宿泊カードには、翌日の宿泊先を書くことになっている

前日の受付時には、彼女は北湯沢と書いていた

その夜テンは現れた

美しい毛なみで、黒く大きな目が印象的だった。

あの夜、彼女がいたことは本当のことだったのだろうか?

本当に、非番で天気が良ければ一緒に札幌の街を歩いたのだろうか…

忙しい毎日だったけれど、僕は彼女のことを忘れてはいなかった。

宿泊帳を調べれば、彼女の住所などはすぐに分かる。

だけど、そんなことはできない。

僕は次の場所への移動を本格的に考えてた。



雪祭りの時期がが過ぎたある日

「ただいま」

そう言って、突然、彼女が戻ってきた

「予約はしてありますよね?」

僕たちヘルパーは、よほど驚いた顔をしていたのだろう。

彼女もキョトンとしていた。

「私のこと覚えていますよね?」

予約を受けたのは、彼女が去ってから入ったヘルパーだったのだ

彼女は別人のようだった。

他のヘルパーたちと朗らかに楽しそうに話をしていた。

なにより表情がとても豊かだったのだ。

「おかえり…」僕がそう言うと、彼女は一瞬であの夜の表情に戻った

「ただいま」そう言って彼女は背負っていた小さな鞄をおろした




「ねぇ、約束覚えている?」

「はい…憶えています」

「明日、休みでしょう?。」

「はい…でもどうして…それを知っているの?」

「多分、風呂の掃除当番の翌々日は非番なんでしょう?違う?それとも当たった?」

僕は風呂掃除のためにズボンの裾を捲り上げたままの姿で彼女を迎えていたのだ

「それに、受付があの日の彼が当番みたいだし…ね? 違う?」

僕は彼女の頭の良さに驚いていた。

「それに…」

彼女はこらえきれずに笑い出した。

「だって、あそこのカレンダーに休みの日を書き込んでいるじゃないの…」

ケラケラケラと少女のように笑い続けていた。

「はい、これ。プレゼント。」

笑い収まると、鞄の中から文庫本を取り出した

僕にそれを手渡すと、彼女は鞄を背負って小走りに部屋に向かってしまった




違うのは窓の外の景色だけだった

相変わらず夜になると肌寒いし、毛布とココアは必要だった

「ねぇ、どう思う?」

「ん?」

「人間の運命って誰が決めるのかしら?」

「突然すごいやなぁ~ さぁ…多分、誰とかじゃなくて…自分じゃないかな?」

「そう言うと思った。」

彼女はココアを一口飲んで、クスクスと笑った

「どうして、あの本をプレゼントしたと思う?」

僕は貰った文庫本の著者の名前を知らなかった

高卒後に、遮二無二働いて体を壊し、次の職場で面白い先輩に出会った

「どうして旅に出なかったんだ」という友部正人のCDを僕に何度も何度も聴かせた先輩は

この曲が良いと思ったのなら、なんでお前は旅に出ないんだ! と酒を呑むたびにからんできた。

そして僕は旅に出て、この街にいたのだ。

「さぁ、どうして?」

「さぁ、どうしてかな?。 私が一番好きな本だからかなぁ~」

「ふーん、なんか難しそうな本だよね。」

「絶対に読んでね。私がその本を読んで旅をしたくなったんだから。」

「へぇ~難しくない?」

「うん、その人の小説を読み漁るうちにね、ある言葉に出会ったの。」

「なにそれ?」

「彼が哲学をやっている友人に教えられた言葉。」

「どんな言葉?」

「カントの言葉なんだ。」

そこに、テンが現れた。

「あ!」

彼女は窓に近寄り、目を輝かせてテンを眺めていた

「ほら、やっぱり…運命は自分が決めるんだ…」

彼女は小さな小さな声でそう呟いた。



翌日、彼女と街を歩いた。

そして、温水プールで疲れきるまで泳いだ。

50mを何本も何本も…

ほとんど話をしなかった。

でも、ずーっと彼女と会話していたような気がしてた。

茹で上げスパゲティを食べてから、僕たちはユースホステルへの帰途についた。

バスを降りて、長く緩やかな坂を登っていた。

最後のカーブを曲がるとユースホステルが見える

「ねぇ、ほら…」

彼女が立ち止まった。

「見て…ペテルギウス…綺麗…それに…シリウス…意味を知っている?」

「へぇ~俺は星に詳しくないから…」

彼女は僕に近づき、天に指さしてもう一度ささやいた。

「あの赤くて光り輝いているのがペテルギウス…オリオン座はわかる?」

「うん、あの四角っぽいやつやろう?」

「そう、ほら一番明るい星…」

彼女の息は白く、僕の肩に届いた。

「そして…ほら…この空の中で一番明るい星 それがシリウス…」

「あれのこと?」

彼女と同じ視線になるように、膝を曲げた

頬と頬がくっつきそうだった。

「そして…プロキオン これが冬の大三角形」

彼女が僕の方を向いた。 

唇と唇がくっつきそうになった。

見つめ合った。

「まるで、恋人同士みたいやな。」

「うん…恋人同士だね。」

また歩き始めた。ゆっくりとゆっくりと。

ユースホステルの灯りが近づいてくると、星も見えなくなってきた。

だけど、僕たちはもう立ち止まらなかった。

その夜は、彼女とは話さなかった。

話すと全てが壊れる気がした。


昼間に彼女が僕に残した言葉が漂っていた。

「私、結婚をやめたの。もちろん両親の逆鱗に触れたけど…」
「大学で理工学部に入ったのはね、星に魅せられたの…」
「両親の敷いたレールに反発したのでもないし…」
「許婚を愛していないって分かったの…」
「悩んでいることをやめて歩き出すことにしたの…」
「ありがとう…」

僕がしたことは毛布を渡してココアを入れて、窓の外を一緒に見たことだけだった。

そして、彼女が話す内容をただただ聞いていただけだった。

話を聞くのが誰でも良かったのではなく、本当に僕が良かったのだろうか?

彼女は、それだけの言葉を伝えるためにこの場所まで来たのだ


「ああ、いかに感嘆しても感嘆しきれぬものは、天上の星の輝きと我が心の内なる道徳律!」

その数年後、僕は結婚をし、カントの言葉を理解したのは随分後に大学に入ってからだった。

そして、モンゴルを旅した後になって、やっと井上靖「蒼き狼」を感じることができた

あの時、冬の大三角形を教えてくれた彼女は何を伝えたかったのだろうか?

だが、彼女は僕と対等だった。というか同じだった。

伝えたいものはなく、ただ伝わっていた。



そして、もう何年もたってから、彼女がユースホステル宛てにハガキを送ってきた

僕はその葉書の写真をみせてもらって声を上げた

長野にある電波望遠鏡の前で、白衣を着て写っていた彼女は、あの時と全く変わらない美しさで笑っていたのだ


おしまい

【 これは、全くの実話です  】
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カテゴリ: 僕のエマノン

[edit]

Posted on 2012/05/21 Mon. 21:13    TB: 0    CM: 5

この記事に対するコメント

素敵です。
美しい想い出をもっている人は・・・

URL | P120548 #-

2012/05/21 22:07 * 編集 *

イイッ

何だかよくわからないのですが、ピュレグミの味がします。
いや、ずっとずっと複雑な味ですが、甘さと酸味の具合はピュレグミの黒いパッケージ。

いいなぁ、こういうの。

素敵なお話し、ありがとうございました。

URL | massasue #-

2012/05/21 22:28 * 編集 *

セラミックさんは幸せな方ですね。楽しませて貰いました。
テンも出てくれたし。
またいつか、別な実話を楽しみにしています。

URL | monkage #-

2012/05/21 23:01 * 編集 *

余韻が大事なんだ…

ノンフィクションに勝るフィクションは無し!
あるところにはこういう実話があるんですねぇ。
淡々と書いてるから余計に引き込まれてしまう、婚前特急じゃなかった深夜特急じゃないですか…
銃撃戦やアストンマーチンやロシアのスパイとの格闘はないけどそれ以上の余韻が残りますよ。

今、ふと「しあわせのパン」を思い出してしまった…

URL | ヤジオショー #-

2012/05/22 01:50 * 編集 *

街の銭湯で自分の体ばっかり洗ってるこの私。

そうかあ。私がこのノンフィクションに恋い焦がれた本当の理由がようやく判りました。
この僕も彼女も「旅」に出て、「運命は自分で決める」と思い定めておられる。
そんなお二人のありようがとっても羨ましかったと、思うからなんですね。
「行っても行かなくても同じだと思ってしまっていた」、いや今でもそう思ってる私。
そんな私には「おかえり...」「ただいま」たったこれだけの言葉であの時の気持ちにスっと
戻れたお二人がとても眩しく映るのです。

宿泊帳を辿って連絡をすることも、温水プールで話かけることもなく、
冬の大三角形を観たあと、全てがこわれてしまう気がするから、と話もせず、
毛布を渡してココアを入れて、窓の外を一緒に見ただけのお話の中の私。
自分にはマネが出来ない、全てが素晴らしい、と思いました。
そんな人だからこそ、彼女はわざわざ戻ってきてことの次第の総てを話され、
「ああ、いかに感嘆しても感嘆しきれぬものは、天上の星の輝きと我が心の内なる道徳律!」
という言葉をのこしてくれたのですよね。

とてもとても素晴らしいお話をお教えいただき、感謝をしております。
「長野にある電波望遠鏡の前で、白衣を着た写真」を送ってくれた彼女は、
きのうの金環日食をどこで観ておられたのたのでしょうね...。

P.S. 友部正人さんは全く聴いたことがなかったので、
「どうして旅に出なかったんだ」を改めて聴いてビックリしました。このサウンドは
私が高校時代熱中していた、かつてディランのバックバンドもしていた
「ザ・バンド」と一緒だ! 日本にこんな音楽を演っていた人がいたんだ! と思い知りました。
スゴイですよ!!

URL | チョービギナー #h7JsBsjs

2012/05/22 09:48 * 編集 *

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